ネックレス

 最近、生まれて初めてネックレスという物を身につけ始めた。そして初めて、孫の手を使う時にネックレスが邪魔になることを知った。でも、このネックレスは外せない。私たち2人の結婚指輪がそれぞれに通してあるから。

 私の体はメタボまっしぐらなのに、どういう訳か指が痩せたらしく、何かの拍子に指輪が抜け落ちてしまうようになった。だから、落とさないように指から外してしまっておいた。けれども左手の親指で薬指を触る度、指輪の無い心地の悪さが気になっていた。

 妻は妻で指輪を外していた。金属アレルギーを起こすようになってしまったという。抗がん剤の影響かも知れないと。

 でも、結婚指輪は2人をつなぐ証。もちろん、指輪などなくても互いのつながりを感じていられれば、何の問題も無い。だけど最近は頓に喧嘩が増え、衝突や行き違いが増えている私たち2人。なおのこと、つながりの証を絶えず身につけておきたい。

 そんなわけで、医療用のステンレスで出来たネックレスを買い、2人で結婚指輪を通して首に下げることにした。だから、このネックレスは外せない。じきにネックレスをしたまま、孫の手を上手く使えるようになるだろう。