不動産

 この週末はアパート、貸し屋、売り家を見て回った。まだ早いけれど、いずれこの社宅から追い出されるなら、借りるにせよ買うにせよ、物件の勘所を知っておきたかったから。いい売り家があったら買ってしまうのも悪くないだろう。


 見て回った中の売り家の一つを相方がいたく気に入った。私も、少々古いが悪くは無いと思った。日当たり、風通しは良い。部屋数も十二分。職場も駅も近い。ここにあれを置いて、あの部屋はこう使って、などとちょっぴり夢を膨らませた。


 帰宅後も相方は「どんな風に住みたい?」とすっかり乗り気。買えない値段では無い。私もその気になりつつあった。


 だが、ハタと気がついた。わが家で「掃除」という行為をするのは私だけ。あんなに部屋数が増えたら、それだけ掃除すべき部屋が増えるわけだ。相方は「家を買ったらちゃんと掃除をするか?」という交換条件が通じる相手じゃない。高い買い物をしてイライラがますます増えるなんて、冗談じゃ無い。


 束の間の夢はあえなく終わった。「家を買うのは止めだ」と告げると相方はにわかに不機嫌になったが、知ったこっちゃ無い。危ないところだった。