お弁当

 ブログに並んだ、おいしそうな手作りのお弁当の写真を見ていると時々、ふと思い出す。

 私の母は専業主婦で時間に余裕があったためでもあろう、栄養バランスや彩りなどにもとても気を遣って、ほぼ毎日弁当を持たせてくれた。中1から大学卒業まで。

 中学生の時。そんな私の弁当箱を覗いて、同級生の1人が毎日のように「取っ替えて」といって箸を延ばしてきた。そんな彼のお母さんは共働き。朝は忙しいのだろう、彼の弁当にはいつも冷凍食品が詰まっていた。正直なところ、私には魅力的では無かった。

 だから、私は彼の要求に渋々と応じながらも、「これはお母さんが僕のために作ってくれた弁当。あげたくないんだけどなぁ」と思っていた。時には断ることもあった。

 だが、今思えば当時の私は、ずいぶんとケチだったものだ。「そう?僕のお母さんが作ってくれたおかず、そんなにおいしそう?いいよ、分けてあげるよ」ぐらいの余裕が当時の自分にあったらよかったのにな、と手作りのお弁当を見る度に、そう思う。自分に対する恥ずかしさと残念さが入り混じったような気持ちで。

 所詮は子どもの器、そんなものだったのだろうか。だが、もしあの頃に戻れるのなら、喜んで彼に母の弁当を分けてあげたい。