アスリートに美男美女が多いのはなぜ?

 このことについて、私は少し前まで、ある一つの仮説を持っていた。そんなに大げさなものでは無いが。

 指導者も人間だから、格好いい子、可愛い娘を指導するときには、ついつい熱が入ってしまうのではないかと考えていた。その結果、格好いい子、可愛い娘が他の子たちよりも目をかけてもらえるようになり、結果として実力も付いてくるのではないか、と。

 しかし近頃、私はこの考えを改めなくてはならないと感じるようになった。

 一流のアスリートたちは、常日頃から自身をギリギリまで追い込み、激しいトレーニングを積んでいる。それには強靱な肉体だけでなく、強靱な精神力が必要とされるであろう。
 そうやって困難を乗り越え、鍛え上げた精神力は並大抵のものではあるまい。そして、その内面の強さが自ずと顔に、表情に表れるのではないかと考えるようになった。確かにアスリートたちの顔の美しさは、目鼻立ちに現れるような美しさ(だけ)ではなく、体の中から沸き上がってくる力強さに裏打ちされた美しさのように感じられる。

 話は変わるが、第16代アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーン(Abraham Lincoln)は、「40歳になったら人は自分の顔に責任を持たねばならない」と語ったという。当時より寿命が延びているとは言え、身につまされる言葉である。
 アスリートほど激しく自身を追い込まないまでも、少しは自分の顔に自信を持てるようになりたいと思う。
 精進、精進。