望まれて…

 私の鬱状態が非常にひどくて、廃人状態と言っても過言では無かった頃。実家から、写真立てに入った一枚の写真が届いた。

 裏に書かれた日付からすると、私が生後8ヶ月頃の写真のようだ。
 あまり目につかないところに置きっ放しになっていたのだが、引っ越しを機に、目立つ場所へと置き直した。

 近頃に限らないのだが、私は鬱状態になると自分の存在意義を見失う。自分など、誰からも必要とされてはいないに違いないと。時には、いてはいけない存在なのでは無かろうか、とも。
 そんな折、この写真を再発見して、ふと思った。ここに写っている私の目の前には、私に笑顔で声をかける母の姿と、同じく笑顔で私にカメラを向ける父の姿があったに違いないと。

 月並みな表現だが、「私は望まれて、この世に生まれてきたんだ」、少なくとも私の両親からは。そう強く感じた。確信した。今後は自分が不要な人間に思えてならなくなったときには、この写真を見て、そして考えたことを思い出そうと、そう思った。そのためにも、この写真は目立つ場所に置いておこう。

 写真のネガは、今となっては実家で整理されている可能性は低い。こうして写真はスキャンして、写真立ては実家に「ありがとう」と言って送り返すことにしよう。