山道で脛の辺りを蛭(ヒル)に噛まれた。あいにく虫除けや塩水の類は持っていなかったのが敗因の一つだろう。

長靴の口はきつめに閉めておいたつもりだったのだが、ズボンと長靴とのわずかな隙間から入り込んだらしい。噛まれても痛くも痒くも無いから、見て探すしか無い。河原で休憩した時に長靴を脱いで念のためにと確認したら、見事にやられていた。元は長さ1.5cm位のイトミミズぐらいだったのが、血をたっぷり吸って、太さ5,6mm、長さ4,5cm位に太く長く膨らんでいた。

口からは血が固まらないようにする物質を出している。無理に引きちぎるとがっちりと噛みついた頭部が残って血が止まらなくなるという。場合によっては傷口から雑菌が入って化膿するという、有り難くないおまけもあるらしい。

煙草の煙を近づけると落ちる、と言われているが、残念ながら同行者に喫煙者はいない。毒蛇などと違って一刻を争う対処は必要ないが、そのままにしておくわけにも行かず、「どうしたら離れるだろう?」としばし悩んだ。

で、思い付いたのが携行していたウナコーワ。頭の辺りに塗りつけてみたら、余程嫌だったのだろう、あっさりと落ちた。その後、同行者に取り付いた奴も、血を吸われる前に落とすことが出来た。

だが、頭があの凝らずに離れ落ちても、出血は止まらない。絆創膏を貼っても圧迫止血をしても効果が無い。結局、その後立ち寄った温泉で血液凝固を妨げる物質が洗い流されたらしく、ようやく出血は止まった。

前述の通り、痛くも痒くも無い。ウナコーワの直後に綺麗な川の水で、さらに、その後温泉で傷口を洗い流したので、噛まれたところが化膿するようなことも無かった。そんなわけで、ズボンが血で汚れたぐらいで大して実害は無かったが、何とも気持ちの悪い体験だった。

唯一の収穫は、「これからはタバコじゃなくてウナコーワだな」と、妙に盛り上がったことだった。蛭がいる山に入る方は、ウナコーワをどうぞ、お忘れ無く。ムヒでもいいでしょう。