「お揃いだ〜」

 仕事始を前に、散髪することにした。といっても、丸刈り頭の私はいつも妻にバリカンで刈ってもらうだけだ。だが、丸刈りと言っても数ミリの違いで、結構涼しさ、寒さが違う。といっても、すぐに伸びるから、やはり大差はないのだが。

 「いつものの6mmにしようか、寒いから9mmにしようか、それとも、前回同様、思い切ってすっきり3mmにしようか」「そうそう、電源コードはどこにしまったっけ」

 さて、妻を呼んで散髪開始。ブイ〜ン。

 「あれ?あんた、(長さを決める)アタッチメントつけた?」
 「あ、忘れてた」

 しかし、今更アタッチメントをつけたところで、例え周りが3mmであっても0mm地帯は目立ってしまう。否応なしに、0mmにせざるを得なかった。

 すっかり刈り上がった私の頭を見て、妻が嬉しそうに言った。「わ〜い、おそろいだ〜」。彼女の頭には抗がん剤の副作用で、髪の毛が数えられるほどしか残っていないのだ。

 抗がん剤による治療を始めた時から、彼女の髪が失われるのは分かっていた。そして、丸刈り頭ではあったが、私は少々悩んでいた。いつも通り数mmにして置くべきか、それとも2人揃って0mmにするべきか。

 というのは、私の頭に髪があると鏡に映った自分の姿と見比べて、気落ちしてしまうだろうか。それとも、私の頭に髪があれば、化学療法が終われば髪が戻ってくると思っていられるのだろうか、どちらなのだろうかと。実際のところ、彼女が治療を初めてすぐに、この質問を投げかけてみた。すると、「あんたまで、ハゲ頭にならなくていいじゃん」と。
 しかし、やはり鏡に写った自分の頭と私の頭にギャップがない方が良かったようだ。それならそうと、早く言えば良いのに。

 だが、最後の化学療法は終わった(手術、放射線療法、ホルモン療法が控えてはいるが)。
 じきに、私が髪を伸ばしても彼女は気にしなくなるだろう。

 昨夜は、2人揃って「頭が寒〜い」を連発しながら床についた。