「トム・ソーヤ作戦」と噴火警報

 相変わらず、一向に掃除というものをしない妻。イライラしていても仕方ないし、声を荒げて言い聞かせるのも気分が悪くなるだけのように思えてしまう。

 飼っている亀の水槽を洗ったついでに、風呂の(一度に全体は疲れるから)片隅を掃除し始めた。私が風呂場から戻らないせいか、妻が来て扉を開けた。そして、「ありがとう」と言った。

 「いつも、こういう所を掃除して欲しい、って言ってるんだけどなぁ」と言うと、ヘラヘラ笑いながら扉を閉めて去っていった。ホントに使えない奴だなぁ。まあ、いいや。やりかけたんだし、キリの良いところまで洗ってしまおう。

 しばらくして、再びやってきた。そこで、「掃除、楽しいよ」と言ってみた(実際、ずっと気になっていた汚れが落ちていくのは、結構楽しかった)。今度は、私の頭を軽くこづいて去っていった。一体何なんだ?「トム・ソーヤ作戦」も、やっぱり通じないか。

 仕方ない。今日の所は見逃してやろう。ただ、今まで私はそうやって妻に対する不満を溜め込みすぎ、先日遂に、噴火寸前となってしまった。だが、ケンカの後の仲直りが下手な私は、直接妻にぶつけると、その後収拾が付かなくなる気がして、こらえてきた。しかし、それも限界となってきた。

 そこで、先日、妻に尋ねてみた。「あんなことやこんなこと、そんなことで俺は君に不満がたっぷり溜まっているんだぞ。一気に大噴火してもいいか?」当然の答えだろうが、返事は「いやだ」。

 そのため、妻には段階的な噴火を予告することにした。「いくら頼んでもやらないのなら、やってくれるまでしつこく言うからな」、「それでも聞かないなら小噴火だ」「それでもまだダメなら、その時は容赦なく大噴火するから、覚悟しておくように」と言い渡し、首を縦に振らせておいた。普通の夫婦なら、予めこんな事を言っておく必要など無いのだろうが。

 これだけ予告しておけば、いきなり怒られたとは言わせずに済む(はず)。その分、私としても気楽に怒れる(?)気がするし、怒られた後、謝ってこなくてはいけないのは妻の方だろう。ケンカ後の仲直りが苦手な私には、ちょっとした安心感。夫婦喧嘩のルール(?)を予め確認しあっておくなんて、端から聞いたら変だと思われるだろうが。

 だが、やっぱり大噴火にはかなりのエネルギーがいるし、後味も良くはないだろう。せめて小噴火の繰り返し程度で済ませてくれることを祈りたい。(笑)